「絵には賞味期限がある」
苦しんだ美大の4年間
美大で日本画を学んでいた頃が、恐らく私にとって「絵を描く」ことが1番苦しかった時期かもしれません。
「どうしても自分の絵が好きになれない」
「モチベーションがあがらない」
そんな気持ちで一杯でした。
<( ̄口 ̄||)>
なぜ自分の絵が好きになれないのか?
ハッキリとした理由は分かりませんが、
恐らく、今の目の前の作品が「良くない」ことだけは直感で分かっていたんだと思います。
でもどうしたら良いのか分からず、いつも頭の中はグルグル。
焦る。焦るけれど、いざ筆をとって描こうとすると手が止まる。その繰り返し。
夜も作品のことが気になって頭から離れない。。
あんなに頑張って美大に入ったのは何のためだったのか。
いつもそんなことを考えていました。
でも大学には「単位」があるので、課題は仕上げなければいけません。
とにかくもがいた4年間でした。
美大時代は、自分で納得のいく作品は恐らく1点も描けていません。
「描けた!」という、高校でいつも感じていた達成感を味わうことは全く出来ず。
ひたすら頭打ちをしていた4年間。
自分の絵はダメなんだと、挫折感でいっぱいでした。
けれど、私はそこで恩師に出会うことが出来ました。
今も大切にしている恩師の言葉
大学の日本画の先生は、皆さん現役の日本画家の方ばかりです。
もう雲の上の存在ですね(;^_^A
その時も、課題が上手く進まずに1人で残って作品を描いていた時だと思います。先生がたまたま教室に入ってきて、声をかけて下さいました。
その先生は、数いる先生方の中でも画壇では特に有名な先生。
緊張しつつも、今の作品の講評をしていただけることになりました。
ジーっと私の作品を先生が見て一言。
「うん、鮮度が足りないね。」
作品の鮮度の大切さ。絵には賞味期限がある。
先生<「シロキさん、絵には賞味期限があるんだよ。
描いて描いて、描き進めていくうちに、どんどん絵は熟してくる。
その1番良い感じに熟した、美味しい時に、ぱっと手放してあげる。
そうすると、鮮度の高い絵が出来上がる。
シロキさんのこの作品はね、その美味しい時を過ぎてしまっている。
鮮度が落ちてきている。」
先生の口調はとても優しく、穏やかでした。
その言葉を聞いた時、私が自分の絵が好きになれない理由を、見事に言い当てられたような気がしました。
情熱と執着心は紙一重
私が自分の絵を好きになれなかったのは、その絵が自分の執着心の塊に見えたからです。
「もっと良い作品にしたい。」
その気持ち自体は良いのですが、
そこに軽やかさがないと、だんだんと執着心に変わってしまいます。
熟していても、「もっとこうすると良くなるのでは」と描きつづけて、作品の鮮度が落ちていることにも気づかず、腐らせてしまっていました。
先生の仰った「鮮度の高い作品」を自分で「描くことが出来た」と感じたのは、仕事を始めて8年ほどしてからです。
初めて、自分の作品を好きだと感じたからです。
それ以外では、美大時代の「裸婦クロッキー」。
「作品」とは異なりますが。
決められた短い時間で手早く形を捉える必要があるため、自分の執着心が入る余地がなかったんですね(;^_^A
今考えると、自分のクロッキーだけは好きでした。
そこに大きなヒントがあったのに、当時は全く気づくことはありませんでした。
「良い作品を作りたい」という情熱と、執着心は紙一重だと思っています。
「1番美味しい時に、ぱっと手放す」
今もずっと心に留めている言葉です。